会長ご挨拶

代表理事会長 志鷹 義嗣

 FIRM設立から12年の活動の成果として、再生医療産業の基盤が着実に整備されてきました。2019年から率いてくださった畠賢一郎・前会長に深謝いたします。これまで代表理事副会長として会長をサポートしてまいりましたが、日本における再生医療産業の発展のため一層尽力する所存です。

 さて、わが国で承認された再生医療等製品は、副会長に就任した5年前は4品目でしたが、本年5月末時点で19品目と大幅に増加しており、研究開発品目数も順調に増えています。今般、経済財政運営と改革の基本方針2023(骨太の方針)にも、創薬力強化の中で「革新的な医薬品、医療機器、再生医療等製品の開発強化」が盛り込まれました。さらに、再生医療を推進する議員の会からも、今年を「再生医療推進リスタート元年」にするという提言が出されております。再生医療は、CDMO事業や製造施設・機器・原材料・部素材・検査・物流等に携わる周辺産業を含め、すそ野の広い市場の形成が期待される成長分野であり、日本の再生医療の産業化・成長を後押しする環境変化をしっかりと捉え、FIRMとして再生医療の入口から出口まで足元にある多くの課題を解決することが急務です。

 これまで出口戦略の一つとして、日本におけるドラッグ・ラグ/ロスの一因に挙げられる薬価制度に関し、再生医療等製品の多様な価値を適切に評価する新たな価格算定方式の導入に向けた提言を行ってきました。その結果、昨年来開催されてきた厚生労働省主催の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の報告書に、FIRMの主張が一部反映されたことは大きな前進でした。薬価制度のみならず、他の規制・制度等でも既存の枠組に捉われない柔軟な考え方・仕組みが再生医療の産業化には不可欠であり、FIRMとして引き続き取り組んでまいります。

 入口支援も、引き続き取り組むべき課題の一つです。再生医療等製品の多くはスタートアップ企業やアカデミアが起源になっており、FIRMは、これまでもそれらを支援してきました。今後は、行政との連携を通じ、より上流から再生医療に関するエコシステムの強化に貢献することで、産業として持続的な成長が可能になると確信しております。

 さらに昨年は、再生医療等安全性確保法(安確法)下での活動やCDMO事業における課題を議論・解決すべく、FIRM内に特定細胞加工物等委員会を新設しました。再生医療産業は、医薬品医療機器等法下で製品の研究開発を行う企業だけではなく、安確法下で研究開発を進める企業、また、それらを支える周辺産業によって成り立っています。再生医療産業の発展に向け、サポーティングインダストリー委員会、再生医療等製品委員会に本委員会を加えた3委員会が、課題の整理、提言の策定等を継続していくことを期待しております。

 最後に、FIRM VISION 2025にあるFIRM運営基盤の強化について、チーム主導体制を構築することで、再生医療の中長期の成長を支えるサステナブルな組織を目指したいと考えています。再生医療の今後の発展には、他のステークホルダーとの連携が重要ですが、再生医療の専門性の高い精鋭集団として種々の議論を促進する役割をFIRMが担っていく所存です。再生医療産業の発展に向け、多業種から成るFIRMの英知を結集し一丸となって進んでまいりましょう。

代表理事会長 志鷹 義嗣