会長ご挨拶

再生医療の20年と私たちの繋がり

代表理事会長 畠 賢一郎
代表理事会長 畠 賢一郎

『再生医療』という言葉が世に初めて登場したのは、1999年の小渕内閣にて企画されたミレニアムプロジェクトです。あれから20年が過ぎようとしています。その間、再生医療等製品としては9つの製品が上市されました。うち細胞を使ったものでは7製品であり、あと2製品は遺伝子治療製品です。一方、わが国の再生医療領域最大の学会である日本再生医療学会は2001年に設立され、おなじく約20年の歴史を経ていまや会員数が6000名を超えています。われわれFIRMも2011年にたちあがり、現在256社の皆さんのご参加をいただいています。20年を長いと考えるか、短いと考えるか。また20年間のこれら業績を少ないと考えるか、多いと考えるか。それぞれに違った感想をお持ちだろうと思います。
2014年に行われたわが国の関連規制改革も、再生医療にとってはとても重要な出来事でした。『再生医療等製品』というカテゴリーが定義され、これまでの医薬品や医療機器とは異なる特徴的な内容について、あらためて考えるきっかけとなりました。再生医療は多様で複雑なモダリティーを要します。とりわけ、組織再生を目的として移植されるようなものでは、企業が提供する『モノ』としての特性と、医療機関で実施される『医療技術』としての特性をともに持ち合わせています。再生医療の発展のためには、いかにこれらを合理的に開発するかに加え、適切に評価する手法を構築するとともに、使用後にさらに良い使い方を模索しなくてはなりません。『再生医療等安全性確保法』や『条件および期限付き承認』は、現在、海外からさまざまなご意見をいただいております。しかし、一方では、これら再生医療を『モノ』と『医療技術』の視点からみると、現実に即した内容を多く含んでいます。再生医療がわが国のお手盛りにならないよう国際連携の観点を十分に踏まえたうえで、わが国の制度が意味するところをしっかりとアピールしていく段階に入っているのではないかと思います。
こうしてみると、私たちにとりましてこの20年間の最も大きな功績は、再生医療という新しいカテゴリーのもと、多くの方々が議論してきた内容すべてであるのかもしれません。どこを協調領域として開示し、またどこを競争領域とするのか。再生医療が従来の医薬品や医療機器とは似て非なるものであるために、それすら既存の枠組みでは考えることができません。適切なビジネスモデルはいかにあるべきか。行政やアカデミアの方々とともにFIRM会員すべての皆さんが文字通り手弁当で、さまざまな議論を経て再生医療という未知の領域を構想されました。その経験は、今後もわが国の再生医療の発展に不可欠なものと確信しております。

現在、新型コロナウイルスの猛威によって、人々の繋がりが奪われようとしています。グローバリゼーションのもと小さくなった地球が、この影響の長期化いかんでは大きく変容する可能性も含んでいます。無論、新しい独自の産業や文化も生まれてくるでしょう。しかし、再生医療という複合的な領域の発展のためには、産学官連携、企業間連携さらにはモノと技術の連携は、繋がりなしには生まれてきません。できる限り早くこの災いを克服し、多くの皆さんと繋がりを持った議論ができる日常が返ってくることを心待ちにしています。

代表理事会長 畠 賢一郎