会長ご挨拶

代表理事会長 畠 賢一郎
代表理事会長 畠 賢一郎

 新型コロナウイルスという新しい脅威によって、社会の大きな変革が求められています。さらに、不安定な国際情勢によりまして、平穏に過ごしていた日常も大きく変わろうとしています。持続可能な社会の構築を目指して引き続き努力をする一方で、こうしたリスクにどう向き合うか、いっそう深く考え行動することが求められる時代になりました。 

さて、わが国では2021年は5品目、2022年は5月末現在で2品目の再生医療等製品が承認されました。承認審査に要する期間も短縮しており、日頃からご尽力いただいている関係各位に心から御礼申し上げます。わが国の再生医療等製品はこれで16品目になりました。再生医療等製品がひろく市場を形成する準備が進んできています。再生医療の普及を目指すわれわれは、『①再生医療等製品をつくる』、『②再生医療産業をつくる』、『③再生医療文化をつくる』、と3つのステップを提案しており、2025年度をめどに②まで到達したいと考えてきました。その意味でも、1年間で5品目が上市されたことは『①再生医療等製品をつくる』が確実に進んできているとして評価したいと思います。いまだ製品の絶対数としては多くないものの『②再生医療産業をつくる』のステップに速やかに移行できるよう、本年度も引き続き活動してまいります。 

かつてわが国では、再生医療として主に「細胞を用いた組織再生」を目指す手法がさかんに開発されてきました。その一方で、近年、遺伝子治療関連の製品が注目されています。ex  vivo遺伝子治療の代表例ともいえるCAR-T細胞治療はもとより、各種疾患治療に遺伝子を直接用いるin vivo遺伝子治療にも注目が集まっています。これらすべてがわが国では『再生医療等製品』であり、『医薬品』、『医療機器』とは異なる第3の製品カテゴリーに属するものです。細胞というそれ自体が生きているものから、高度な治療メカニズムを提起する遺伝子まで、まさに究極の多様性を有する製品群を扱っています。FIRMはこれまで、細胞という新しいモダリティー対して、生産体制や品質管理の在り方、有効性・安全性の基盤となる考え方、さらには産業化に資するビジネスモデルの構築などを日々考えてまいりました。より柔軟な考え方をもって、各社の多様な経験を持ち寄り、活発な意見交換を行っています。こうした経験は、先の再生医療の多様性を解決する礎となっています。これからも新しいモダリティーが創出されるでしょう。FIRMでは引き続き、こうした新しい医療に対するアイディアの宝庫であるとともに、ともに考える仲間が集まる場所として機能することを願っています。 

本年3月のFIRM理事会での承認によって、特定細胞加工物等委員会が正式に立ち上がりました。FIRMのコアとなる二つの委員会、すなわち再生医療等製品委員会とサポーティングインダストリー委員会にくわえ、再生医療等安全性確保法に基づいた再生医療等の提供を目指す企業の集まりを組織しました。昨今、患者さんに再生医療をお届けする方法は多岐にわたっています。これまでと同様に製造販売承認を取得し、再生医療等製品として提供する方法にくわえ、再生医療安全性確保法の適切な活用もきわめて重要です。さらには、再生医療に特化した合理的な生産方法の実現やそれに供する細胞加工施設についても話題にすべき内容です。今後、この特定細胞加工物等委員会の活動を通じて、新たな再生医療の価値増大に貢献したいと考えています。

 Withコロナ対応を前提としてはいるものの、かつてのコミュニケーション機会を取り戻すきっかけが見え始めました。さまざまな様相を呈する再生医療に対して、より柔軟な対応をするとともに、より多くのみなさま方との意見交換をへて骨太の再生医療文化を作ってまいりたいと思います。

引き続き、ご支援、ご協力賜れますことよろしくお願いいたします。

代表理事会長 畠 賢一郎