会長ご挨拶

代表理事会長 志鷹 義嗣

2023年6月の会長就任以降、骨太の方針に「再生医療」という文言が明記され、政産官学で再生医療の普及と産業化に向けた様々な議論が交わされてきました。さらに、20246月現在20品目に増えた再生医療等製品に続くべく、iPS細胞関連の臨床開発が活発化しており、本邦の再生医療にとって大変重要な局面を迎えております。これらを好機と捉え、この一年間、FIRM vision 2025に掲げる、「変革につながる提言」、「継続的なイノベーションの創出」、「信頼ある情報の発信」に取り組んで参りました。これらの活動にご尽力いただいた関係者の皆様に感謝いたします。 

「変革につながる提言」については、再生医療に関わるステークホルダーとの議論をリードし、多くの提言策定(再生医療を推進する議員の会、日本経済団体連合会、および事業構想大学院大学主催の再生医療で描く日本の未来研究会)に貢献してきました。そこでは一貫して、1)製品の多様性に則した法規制等の環境整備、2)再生医療へのアクセス向上に向けたイノベーションの評価および医療保険制度の構築、3)スタートアップやバイオものづくりへの支援等によるエコシステムの強化、の3点を主張してきました。特に、規制制度の面では、自家細胞製品の規格外品の例外的提供について厚生労働大臣へ要望書を提出し、具体的な変革につながる第一歩を踏み出しました。多様な再生医療等製品に対して既存のルールが適合していない場合は、それを適時適切に変えていくことが重要だと考えております。提言による変革を通じ、魅力的な研究開発環境や日本市場を構築し、さらにドラッグラグ/ロス等の課題解決につなげていきます。 

「継続的なイノベーションの創出」に関しては、日本の強みでありイノベーションの源泉となるiPS細胞関連スタートアップ企業の上場や海外進出などに大きな進展が見られています。エコシステム強化のため、スタートアップ企業への支援策等について行政にインプットするだけでなく、FIRMとしての取り組みも進めてきております。起業を考えているアカデミア研究者を支援するためのFIRM’s起業塾は、2023年で開始から6年を迎えました。また、バイオものづくりを支援するため、米国の再生医療関連の業界団体ARMと連携し、海外の製薬企業やスタートアップ企業が製造拠点を日本に持つ際のニーズや課題の把握を進めております。さらに周辺産業に関して、製品・サービスの国際標準への適合のため、FIRMマーク認証制度を施行しました。本認証制度により対象製品の供給者・使用者双方の品質管理に対する意識が高まることで、イノベーション創出に貢献できると考えています。 

「信頼ある情報の発信」については、一般市民の皆様の再生医療リテラシーの向上を目指し、再生医療をわかりやすく解説する啓発動画シリーズを展開中です。再生医療のトップランナーとの対談形式のデジタルメディア配信では、10万回を超える再生回数を達成し、多くの視聴者にご覧いただきました。引き続き、信頼ある情報発信を心掛け、再生医療が一般市民の皆様にとってより身近なものになるよう、活動していきます。 

再生医療は既存の医療や医薬品による治療概念を覆す「Game Changer」です。Game Changeによって患者さんに革新的な治療法を提供するとともに、周辺産業も含めて経済成長に大きく貢献できると考えています。再生医療の専門性の高い精鋭集団として、vision達成に向けて一丸となって頑張って参りましょう。

代表理事会長 志鷹 義嗣